雨と桜のあの日
兄者と希望を持って入った学校だった
学校を最後にした
あの夏を
一生忘れない
1学期の終業式の日。
それまで通っていた高校へ最後の登校をしました。
すでに放課後、生徒はいなくなった時間に
教室においてある私物を取りに行きました。
色々あったけれど
それでも兄者にとっては
初めて通った高校です。
受験をし
合格発表に歓喜し
笑顔で入った学校でした。
最後教室で一人、過ごさせてあげたいと思い
早めに行くことを伝えると
困ります、と言われました。
勝手に入ってもらうわけにはいかないので
職員玄関で待っていてくださいと
言われました。
一番、ショックな言葉でした。
色んな事を言われ
憤りも怒りを感じることも何度もあったけど
担任のその言葉は
我が子を全否定することばに
聞こえました。
ただ
ただ
悲しかった
転校するとはいえ
問題があったとはいえ
彼はこの学校の生徒ではなかったのか
言いたい言葉が
ぐるぐると頭と心の中で渦巻いていましたが
言葉が
出てきませんでした
私の様子を察して
兄者は「大丈夫」と
笑って言いました
職員用の玄関で担任を待ち
一緒に教室へ行き
兄者は静かに自分の荷物をまとめていました。
そこには
なんの感情も読み取れませんでした
悲しみも
安堵も
怒りも
悔しさも
静かな
穏やかな表情でした。
また正面玄関へ戻り
来ていた学年主任の先生と
担任へ挨拶をしながら
どうしても涙がこぼれてしまいました。
急にアッと思い出し
明日からの部活動の合宿に
顧問から許可を頂いているので、
参加してお別れの挨拶をすることを一応伝えました。
すると2人とも苦い顔で
「それはどうでしょう」と言ってきたのです。
ちゃんと顧問の先生にも話していると伝えても
「まあ、それでしたら・・・
でも他の生徒が動揺するので、転校することは言わないでください」
とも言われ、涙も引っ込むほど
失望の気持ちでいっぱいになりました。
「言う、言わないはわかりません。では」
それだけ言うのが精いっぱいで
その場を立ち去りました。
なんだ、この学校は。
こんな学校に通わせていたのかと思うと
情けなくなりました。
学校への気持ちや未練が
きれいさっぱりなくなった瞬間でした。
私のほうが、固執していました。
「全日制の公立の学校」に執着していただけで
意味などないことに
私はこの時気づかされました。